病院で働く管理栄養士について、お話します。
現在、給食業界はどんどん二極化が進み、「(委託)給食会社から配属され、病院で働く管理栄養士」と「病院に雇われる管理栄養士」がいます。
病院には、この2種類の管理栄養士が働いているので、それぞれの仕事の違いと、就職活動について、現役病院管理栄養士の経験談を参考にしていただければと思います。
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病院で働く管理栄養士になるには?
(委託)給食会社に就職
就職しやすいのは、「給食会社から配属され、病院で働く管理栄養士」です。
多くの病院では、栄養管理は病院が行いますが、給食管理は給食会社に委託します。
委託していないケースもありますが、これは昔ながらの直営給食なので、今回は割愛しますね。
献立、発注、仕込み、調理、盛り付け、配膳などは給食会社の管理栄養士の仕事ですが、これらは給食会社に委託しているケースが多いです。
給食会社の管理栄養士の仕事は、給食を作る、作る工程を管理するという、おそらく一番イメージしやすい栄養士の仕事になる部分を担っています。
給食会社の管理栄養士は、献立だけでなく、発注や仕込みなど調理師の仕事もしなくてはならないことから、人手不足の会社が多いので、新卒採用でも中途採用でも、ほぼ採用されます。
新卒採用は4年の6月ごろから始まります。
中途採用は随時募集していて、中途の試験を受けて卒業後の4月から働くことも可能です。
病院に就職
難しいのは、病院に雇われる管理栄養士。
管理栄養士の活躍の場は広がっていますが、病院で働く管理栄養士は、花形の職で、非常に人気です。
おまけに、採用人数が少ないので、就活はとても大変です。
卒業後に管理栄養士を取得してからしか仕事が決まらないケースもあります。
私たち管理栄養士は、新卒でも中途でも資格さえもっていれば、未経験可の求人を受けることができますから、焦らず就職活動をすることが大切です。
特に病院に雇用される管理栄養士になりたいのなら、辛抱強く求人を待つ必要があります。
仕事内容・職場の特徴
仕事内容は、給食管理と栄養管理です。
給食管理は、「献立、発注、仕込み、調理、盛り付け、配膳」栄養管理は、「医療チームとして、栄養指導、低栄養患者の栄養管理」を行います。
栄養管理
まずは、栄養管理のお話からします。
高校生のみなさんは、日本に「低栄養の患者があふれている」イメージを持てないでしょう。
しかし、現在入院されている患者さんの多くは低栄養状態になっているのです。
発展途上国でもないのに?と。私もそう思っていました。
低栄養の理由は、高齢化社会。
管理栄養士といえば「食べ過ぎのおじさんが糖尿にならないように指導している」「コレステロール値のたかいおばさんの血液をサラサラにするための指導をしている」と思うかもしれません。
もちろん、これも私たちの仕事ですが、病院には学生さんが想像する以上に「食べられないお年寄り」「食べられないことで低栄養になり皮膚に穴があいてしまったお年寄り(褥瘡といいます)」がいます。
そのような低栄養の患者さんの褥瘡を治し、低栄養状態を治療するためにどのように口から食べれば良いのかを考える、これが高齢者社会の病院管理栄養士に求められています。
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給食管理
次に、給食管理。給食管理は、先ほども書いた給食の流れを管理します。
献立をたて、発注をし、人が足りなければ仕込み以降も管理栄養士が担当することも多いです。
こちらの仕事は、現在では給食会社に委託が可能で、同じ病院でも「給食会社の管理栄養士」と「病院に雇われている管理栄養士」がいるのは、このような背景があるためです。
病院で働く管理栄養士の待遇
待遇は、給食会社の管理栄養士よりも病院に雇われる管理栄養士のほうが良いです。
病院に雇われる管理栄養士の場合、給食に携わらないのであれば、土日休みの病棟や事務のみの仕事も可能なためです。
月額給料は20万程度が多いのですが、大きい病院であればおボーナスが4か月分くらいもらえるところもあります。
給食会社の管理栄養士は、365日3食を提供するためにシフト制、年末年始やお盆も仕事です。
月額給料は18万程度ですが、ボーナスはない会社も多く、待遇は良いとはいえません。
しかし、給食管理ができない、給食が作れない管理栄養士では、良い栄養管理はできません。
自分たちが提供している給食がどのようなものかという理解は非常に重要です。
転職は比較でき容易な業界ですから、労働条件の悪い給食会社でスキルアップし、条件も仕事内容も華やかな場所へ転職していく先輩もたくさんいます。
もちろん、私もそのひとりです。
受験生へのメッセージ
管理栄養士は、仕事はハードであまり年収が良い仕事ではありません。
しかし、長く働けるという点や、転職がしやすい、全国どこにでも仕事があるという面があります。
メリットデメリットをよく考えましょう。
ただ、これは大学4年に考えてもよいことだと思います。
管理栄養士養成施設を卒業すると、特に大学の場合は食品メーカーや製薬メーカーに就職するひともいます。
事務職や公務員になるひともいます。
管理栄養士養成施設に入ってからの進路変更は可能ですが、違う学部に入ってから管理栄養士になりたい!と思っても、管理栄養士にはなれません。
もし、受験生のみなさんが、管理栄養士になりたいという気持ちを持っているのでしたら、ぜひ栄養学科への進学をおすすめします。
仕事として管理栄養士を選ばないことになっても、料理や栄養、人体の仕組みなどを学ぶことができますので、学ぶ内容は自分の人生に生かすことができることばかり。
学問としては非常に面白い分野だと思います。